入学式の日に、家族写真はほとんど撮れません。
受付があって、クラス発表があって、体育館に入って、写真屋さんの記念撮影の列に並ぶ。終わって外に出たときには、子どもは疲れているし、親は荷物を持っている。校門の前は同じことを考えた家族で渋滞している。
その場でスマホを何枚か撮って、あとで見返して「もっとちゃんと撮っておけばよかった」となる。よくあることだと思います。
2025年の4月、あわら市のご家族から入学祝いの撮影をご依頼いただきました。式の日ではなく、その前後の一日を撮影にあてるという組み立てです。結果として、式の日には残せない種類の写真になりました。七五三の相談をいただくことが増える時期なので、その考え方ごと書いておきます。

通うことになる学校で撮る
はじめに向かったのは、この春から通う小学校でした。
休みの日の校庭には誰もいません。校舎の前、玄関の前、校庭のはしにある遊具。ふだんは撮れない場所で、時間を気にせず立ち位置を変えられます。

この場所を選んだ理由はひとつです。6年間毎日通うことになる場所を、まだ一日も通っていない状態で撮れるのは、この時期しかないからです。
同じ校舎の前で、6年生の卒業のときにもう一度撮れば、それだけで並べられる写真になります。そのときのために、背景を意識して引きの構図も残しました。校舎の全景が入るカットは、あとから効いてきます。

集合写真も校庭で撮りました。祖父母、両親、中学生のお兄ちゃん、新一年生の妹さん。6人が揃っています。全員が同じ日に、同じ服装で、同じ場所に立てる日は、思っているより少ないです。

兄妹を並べた一枚も撮っています。学ランと、黄色い帽子。 この2つが並ぶのは今年だけです。来年には妹の帽子が変わり、数年経てば兄が学ランを脱ぎます。
ランドセルと黄色い帽子は、今年しか撮れない
途中で、ランドセルと黄色い帽子だけを撮っています。

人が写っていない一枚ですが、この撮影でいちばん時間の指定が強い写真です。黄色い帽子をかぶるのは一年生のあいだだけで、ランドセルもこの日がいちばんきれいです。半年経つと角が擦れて、傷が入る。
道具を撮っておくと、アルバムの中で日付の役割を果たします。人の写真だけが並んでいると、何年生のときだったか思い出せなくなります。
全員が同じ日に、同じ服装で、同じ場所に立てる日は、思っているより少ないです。
場所を2つ持つと、写真の種類が変わる
学校のあと、桜並木へ移動しました。あわら市の「あらた坂」です。
金津レンゴーグラウンドの横にある、200mほどの道。もともと地元では知られた桜の名所でしたが、漫画『ちはやふる』で主人公の千早と、あわら市出身という設定の新(あらた)が再会する場面のモデルになった場所として、2019年に「あらた坂」と名づけられました。入口には記念碑が建っています。

学校で撮っている40分ほどのあいだに、子どもは撮られることに慣れます。最初は身構えていた表情が、二か所目に着くころにはほどけている。移動時間が、そのまま子どもの助走になるので、自然な表情は決まって後半に出ます。
桜並木では、並んで歩いてもらうところから始めました。並んで歩くだけの時間は、ポーズを指示されている感じがしないので、会話が戻ってきます。その状態で撮ると、目線をもらわなくても写真になります。


お父さんに抱きつく、お母さんにしがみつく、お兄ちゃんに追いかけられる。ここで撮れたのは、全部そういう写真です。学校の校庭では出てこなかった種類の表情でした。場所を2つ持つというのは、背景を2種類用意するという話ではなくて、時間の使い方の話です。

祖父母が一緒に写っている意味
この日は、おじいちゃんとおばあちゃんが一緒に来ています。

ご家族の記念写真を撮っていて、いちばん「撮っておいてよかった」と言われるのは、実はこの世代が写っている写真です。子どもの成長は毎年撮る機会がありますが、祖父母が元気に立って歩いている姿を撮る機会は、行事の日にしかありません。
入学、七五三、お宮参り。祖父母が集まる日は、だいたいこの3つです。集まる日を撮影日にすると、それだけで三世代の写真が手に入ります。
最後は、車に乗り込むところまで撮りました。

七五三も、同じ組み立てができます
ここまで入学の話でしたが、七五三でも考え方は同じです。
ご祈祷の日は、着付け、移動、受付、祈祷、食事会と予定が並びます。ご祈祷そのものは事前予約なのでほとんど待ちませんが、朝の着付けから数えると一日が長い。そこに撮影を挟むと、どうしても急ぎます。着崩れを直す時間も、機嫌が悪くなったときに待つ時間も取れません。
だから 参拝の日と撮影の日を分ける ご提案をすることがあります。
| 参拝と同じ日に撮る | 別の日に撮る | |
|---|---|---|
| 衣装 | 一度の着付けで済む | 二度になる(レンタルなら費用も二重) |
| 時間 | 祈祷の前後の30〜60分 | 90〜120分を自由に使える |
| 場所 | 神社の境内のみ | 神社+公園、自宅など複数 |
| 子どもの機嫌 | 着付けから食事会まで一日が長い | 疲れたら切り上げられる |
| 天候 | 動かせない | 予備日を置ける |
同じ日に撮るのが悪いということではありません。 一度の着付けで済むのは大きな利点ですし、実際そちらのご依頼のほうが多いです。
分けたほうがいいのは、こういう場合です。
- 兄弟姉妹が3人以上いて、全員の機嫌が揃う時間が読めない
- 祖父母が遠方から来られて、当日は食事会の時間も確保したい
- 神社以外の場所(公園、自宅、思い出の場所)でも残したい
- 11月の土日しか空いていないが、その日が雨だと詰む
ご相談のときに、どちらが向いているかを一緒に決めています。
この日の組み立て
参考までに、当日の流れを書いておきます。
スタンダードプラン(90分)で、2か所を回っています。
- 学校での撮影 約40分(校門、校舎前、玄関前、校庭の遊具)
- 移動 約10分
- あらた坂での撮影 約40分(並木道、家族の組み合わせ、個人)
- 納品 134カット
2か所を回るなら、90分は見ておいたほうがいいというのがこの日の実感です。移動を挟んでも、それぞれの場所に40分ずつ取れます。1か所で完結するならベーシック(60分)でも足ります。
納品が134カットになったのは、被写体が6人いて、組み合わせの数がそのまま増えたからです。スタンダードの目安は70カット以上ですが、人数が多い日は自然にこのあたりまで伸びます。詳しい違いはプランのページに書いています。
撮る日は、行事の日でなくていい
行事の日は、行事のためにあります。その日にちゃんと参加して、ちゃんと疲れて帰るのが本来だと思っています。
写真は、別の日に撮ればいい。桜が咲いていて、家族の予定が合う日であれば、それが記念日になります。この日の写真を見返して、入学式の日ではないと分かる人はいません。
あらた坂の記念碑には、かるたの札が彫られています。崇徳院の歌の下の句です。
われても すゑに あはむとぞ おもふ
一度離れても、いずれまた会おうと思う。作品のなかでは離ればなれになった二人の歌ですが、家族写真を撮っている側からすると、別の読み方になります。
この6人が同じ日に揃うのは、次はいつか。 兄妹はそれぞれの学校へ行き、祖父母は年を重ねます。だから、揃った日に撮る。理由はそれで足ります。
福井県内、あわら市・坂井市・福井市を中心に出張で伺っています。家族写真の考え方は家族写真のページに、料金と撮影時間の違いはプランのページにまとめています。
七五三のご相談は、10月に入ると土日から埋まります。日程を分ける形をお考えの場合は、早めにご連絡ください。